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BtoC事業によって自社の高度な技術力を広めていく|石道鋼板

Update: 2024.01.18|CategoryTOPICS, よみもの

自動車製造や金属加工など、さまざまな業種の町工場が点在する江戸川区松江。1966年に創業した石道鋼板も、そんな街の風景を作り上げてきた工場のひとつだ。
「私の祖父が起業しまして、父が現在の社長。私が三代目継承予定者ですね」
工場併設の事務所で出迎えてくれたのが、取締役の石原佑太さんだ。
案内してもらった工場は広々とした空間が広がり、見るからに重たげな金属材料や道具が置かれ、全体が鈍色に染まっていた。隅では職人が鋼板を切断し、激しい火花を散らしている。

石道鋼板の事業は、厚板鋼板のガス切断加工および卸売。板状に圧延した鋼材の中でも地厚のあるものは厚板鋼板と呼ばれ、その加工を専門に行っている。
「業界の中でも、非常にニッチな領域だと思います。厚板鋼板は厚みが6mm以上のものを指すのですが、うちが得意としているのは100mm前後とさらに厚く、取り扱える工場も必要とする産業もかなり限られてくるからです。注文を受けて金属加工業者さんに納品した鋼板は、建築物や造船、産業用機械の部品になっています」

ニッチ分野において優れた技術と独自のノウハウを培ってきたことこそ、石道鋼板の強みだ。
「創業以来ずっと厚板鋼板にこだわってきましたし、現在在籍している職人も全員10年以上のベテランです。100mm以上の鋼板を正確に切断するには、火の入り具合や切断していく速度などを付きっきりで見極める必要がありますし、季節によっては熱の入り方も変わってきます。そのため、職人の技術力が物を言う世界なんです」

石道鋼板が関係先からの信頼を得ている理由は、納期の早さにもある。最短で当日納品が可能な体制を整えているというから驚きだ。
「この会社の規模にしては抱えている材料の割合が非常に多く、基本となる厚板鋼板は常に在庫を持っています。注文があってから板を仕入れていては、要望に答えられませんから」
石道鋼板が取り扱う厚板鋼板は大きな材料であるため、余剰在庫を抱えすぎてはスペースを圧迫し、通常業務に支障をきたしかねない。そこで過去の出荷実績を詳細に見極めることで受注予測の精度を高め、適切な在庫管理を実現しているという。
「ガス切断加工やグラインダーでのバリ取りなど工程ごとに完全分業制にしているのも、作業時間を圧縮できている要因です」

石原さんが入社したのは2018年のこと。それまでは大手のインターネット関連企業に在籍していたが、35歳を迎えるタイミングで家業の経営というチャレンジに身をやつしたいと考えた。
「ありとあらゆるものに手を加えてきました。大きなところでいえば、仕入れ先や仕入れ方法の刷新、新規顧客の開拓、経費の見直しでしょうか。また、前職の経験を活かして業務のデジタル化も積極的に推進しています」
こうした功績が認められ、2022年には「中小企業の模範となるべき経営努力を果たしている」として、江戸川区より産業賞(優良企業)を受賞している。

もうひとつ、石原さんが入社したことで生まれた大きな変化がBtoC事業の参入だ。2021年にオリジナルブランド「MAJIN」を立ち上げ、アウトドア用鉄板「MAJIN -肉専用 超極厚鉄板-」の販売を開始した。10mm、12mm、19mmという厚さの異なる3種類の鉄板を展開。アウトドアで一般に用いられている鉄板の厚みが6mm程度であることを考えると、異例の厚みだ。その分蓄熱性能がケタ違いに高く、肉も野菜もおいしく焼けるとアウトドア愛好家たちに高く評価されている。
「得意としている鋼板加工の技術を活かせるのと、BtoC製品を展開している同業者が見当たらなかったことから、チャンスがあると考えたんです。反響は想像以上で、2年で2000枚も販売することができました」

東東京モノヅクリ商店街に参画したのは、「MAJIN」のさらなる成長を期待してのことだ。これまで商品開発に注力するあまりプロモーションにまで手が行き届いておらず、そこを拡充していく意向だ。
「SNSやwebページも、ちゃんとできていませんでしたから。この間は鉄板のプロモーションムービーも撮影しまして、いろいろなメディアで発信していきたいと考えています」
鉄板の成功を受け、次の企画も進行中だ。今度はパートナーの力を借り、煮る、焼く、蒸す、炒めるができるアウトドア用多機能クッカーの商品化を進めている。2月のギフトショーに出品したのち、5月くらいの販売開始が目標だ。

国内経済の低調が続く中、常に新しい道を模索していくことが大切だと石原さんは考えている。BtoC事業もその一環だ。
「BtoC商品の売上も期待したいところですし、それが本業の顧客拡大につながれば言うことありません。さらには松江にある町工場のひとつだと知ってもらえれば、地域貢献にもつながるのではないかと考えています」
鋼のように硬い意志の下、新しいチャレンジはこれからも続いていく。

INFORMATION

石道鋼板株式会社

〒132-0025 東京都江戸川区松江4-25-17
TEL: 03-3653-9321
URL : https://www.sekidou-kouhan.com/