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東京の下町で受け継がれている高級スリッパの職人技|東京産業

Update: 2023.01.13|CategoryTOPICS, よみもの

東京産業は、1947年に創業した老舗のスリッパメーカーだ。北千住の自社工場には熟練のスリッパ職人が籍を置き、生産から仕上げ、検品までを一貫して行っている。
「ずっとスリッパ専門で、私も30年ほど前に入社して製造に携わってきました。昔は東京だけでも数十あったスリッパメーカーは、今や片手で数えるばかりになりましたが……現在は10名で品質に優れたスリッパを提供しています」
そう話してくれたのは、3代目で代表取締役の丹羽正さんだ。世の中にはさまざまな種類のスリッパが存在しているが、東京産業では家主が自宅で履きたくなるような、履き心地や見栄えに優れた製品の製造に注力しているという。
「簡単な製法で作った安価なスリッパだと、履いているうちに足が痛くなってしまうものばかり。当社には徒弟制度があった頃から腕を磨いてきた熟練のスリッパ職人がおり、吊り込みや外縫いなど手間も技術も必要なスリッパを心を込めて作っています」

丹羽さんが述べた通り、今や数少ない本格的なスリッパを一つひとつ丁寧に製造していることが東京産業の強みだ。たとえば中敷きの内部には適度な柔らかさと反発性を備えた芯材を入れ、長時間の立ち仕事でも疲れにくく工夫されている。甲のフォルムも絶妙で、簡単に足が入るのにすっぽ抜けにくい構造には老舗ならではのノウハウが息づいている。作業には最新の注意が払われ、接着面からわずかでも糊がはみ出るようなこともない。
「現会長の父は80歳を超えているのですが、『今も勉強の日々だ』とよくいっています。いいモノを作ろうという気持ちには終わりがなく、その姿勢をずっと維持することがいい結果を生み出していくのだと信じています」

経済成長を迎えて一億総中流となった頃、各家庭の必需品と見なされたスリッパは大きく売上を伸ばしたという。しかし時代とともに人々のライフスタイルが変わり、東京産業の主な卸先であった高級百貨店の人気は陰りを見せるようになっていく。経営危機を克服するため、2000年代初頭には懇意にしていた問屋の主導の下、他社との合同によるオリジナルブランド・七匠を立ち上げた。
「東京下町のスリッパ職人による、高品質なスリッパを直接お届けしたいと考えるようになりました。本当にいいものを履いていただきたいと考え、丹精込めて作っています」

こだわりが現れているもののひとつは、生地だという。たとえば直接目に触れはしないものの、裏地にコーティングを施すことで耐久性を向上させている。また、左右でまったく同じ柄になるように生地を裁断。これによって取り都合は悪くなってしまうが、見た目の美しさを優先させた。生地そのものもオリジナルだ。
「七匠で3000円のスリッパを出すと、しばらくして同じような柄を真似した2500円のスリッパが出てくることがあります。人気商品に追従しようという空気があるんです。ウチは真似されても仕方ないから、どこよりもいち早く、生地や形、履き心地、すべてで満足していただけるスリッパを送り出していきたいと思っているんです」

百貨店一本でやってきた体制から、オリジナルブランド・七匠での展開も加えた東京産業。さらに経営を安定させるには多角的な事業展開が不可欠と考え、OEMも強化していきたいと考えている。
「今でもOEMを行ってはいるのですが、もとからつながりのあった関係先から依頼されるケースがほとんど。もっと広く活動していきたいんです」

そうした目的から、東東京モノヅクリ商店街に参画した。東京産業が提供できる価値や存在そのものを広く知らしめるため、訴求力に優れたカタログやホームページの製作を進めている。
「東京の片隅でスリッパを作っているメーカーがあるということ自体、ご存知のない方がほとんどでしょうから。私たちもよいスリッパを作るだけでなく、そのことを知っていただく努力も必要なのだと感じています。いろいろな機会を通じて東京産業の存在を知ってもらい、本当に履き心地のいいスリッパのよさを知っていただきたいですね」

INFORMATION

東京産業株式会社

〒120-0026 東京都足立区千住旭町17−13

TEL : 03-3882-4860

URL : https://www.tokyosangyo1947.com/