東東京MAP

We believe that we will be able to make a new world
and value things correctly with the creativities
SUPPORTED by SELF

たとえ赤字になっても小豆の質は落とさない|大江戸

Update: 2021.01.25|CategoryTOPICS, よみもの

四角く固めたつぶあんに小麦を溶いた生地を塗り、六面すべてを焼き上げる和菓子──きんつば。そのきんつばで知られているのが、大江戸だ。菓子業界で最高の栄誉とされる全国菓子大博覧会で数多くの賞を受賞するほどで、今もその味を守っている。
1948年、国鉄を退職した齊藤祐氏が脱サラし、菓子販売を開業したのが大江戸の原点だ。

「駅の販売所、今のキヨスクが主な販売先でした。関係者の伝手を頼って販路を広げていったそうです」
そう当時のことを教えてくれたのは、創業者の子息で現取締役会長である齊藤実さんだ。創業から間もなく製造設備を整え、メーカーとして事業を拡大していく。

後に社名として改称も行うこととなった、大江戸という言葉。そもそもは東京土産のコンセプトで企画したお菓子の名称だった。

 

「当社で製造していたこんぺいとうや豆菓子に加え、カルメ焼きやおこしなど他社からも仕入れて10種類を詰め合わせたんです。当時としては珍しい商品で、駅だけでなく高速道路のパーキングエリアや空港、船内、歌舞伎座、演舞場など、いろいろな売店で人気を呼びました」

1970年代半ば、経済の成長に合わせて日本人の舌はますます贅沢になると、お菓子の世界も乾物よりやわらかな生菓子が好まれるようになった。時代の変化を察した大江戸は、きんつばの製造に着手。これを「大江戸きんつば」として販売すると、そのおいしさから話題を呼び、菓子業界の賞も受賞。今日に至るまでの看板商品となる。
「当時は列車での車内販売も大きな収入源で、ウチでは製造していないお菓子類を他から仕入れて小分け販売していました。ですけど、段々と価格的に厳しくなり、各メーカーも自分たちで販売するようになって、結局辞めることに。その分、『大江戸きんつば』などの生菓子製造に注力するようになったのです」

高い評価を集めた理由は、原材料と製法へのこだわりにある。
「とにかく、あんこにこだわっています。DOKという北海道産で最高格付の小豆を100%使用し、職人が釜につきっきりで炊いているのです」と力説してくれたのは、代表取締役社長の福田光伸さんだ。齊藤実さんの息女で専務取締役である福田貴子さんの伴侶で、2018年からこの二人が大江戸の経営を主導している。
「その年の気候によっても相場が大きく変わるため、作るほど赤字になる状況もあるのですが、それでも小豆の品質を落とすことはありません。素材は絶対裏切りませんから。粒が揃っていて、小豆そのものの風味がしっかりしているんです」

貴子さんも、大江戸きんつばの品質には絶対の自信を持っている。
「季節によって多少寒天の量や塩梅を変えていますが、配合自体は誕生以来変えていません。当時は砂糖や添加物をたっぷり使う菓子が多かったので、『甘さ控えめ』という印象を持たれていたそうのですが、今では素材本来の味を楽しめる菓子としてファンになっていただける人が増えているんです」
限られる人手と生産量の増加から、数年前にきんつば製造用の機械を導入。機械メーカーと膝を詰め合わせて構造を突き詰めたことで、古くから変わらない仕上がりを実現した。さらには、ひとつひとつ生地のあまりをハサミでカットして口当たりを良くしたり、「大江戸」の焼印を押したりという一手間を掛けることでも、商品としての質を高めている。

現在、きんつばは小豆、栗、抹茶、ごまなど7種類。このほかに人形焼やどら焼きなども製造している。いちごミルクやラムレーズンなど新たな具材の開発にも積極的で、人気キャラクター「ハローキティ」とのコラボも実施した。
東東京モノヅクリ商店街への参画した理由も、志を同じくする他業種と仲を深め、新しい挑戦のための刺激を得ることが目的だったと光伸さんは話す。
「具体的には商品のパッケージですとか、ブランディングなどを相談させてもらっています。これまでは劇場が主要な販売先でしたが、コロナ禍によって厳しい状況に陥りました。SNSでの発信をきっかけにしたECサイトなど、新しい試みをしていかなければならないと痛感しています。工場内の開発室にお客様を招待し、いろいろな具材で作ったお菓子を試食していただくようなイベントも企画しています」

2009年、経営難から廃業を考えたが、続けてほしいという卸先やファンからの強い要望を受けて事業の継続を決めたこともある。
「卸先からは『掛け率をいくら上げてもいいから』『こちらから商品を取りに行くから』、お客様からは『おいしいきんつばありがとう』など、温かい言葉をたくさんいただいたことが励みになりました」と、貴子さんは当時を振り返る。事業規模を縮小し、取り扱い商材を見直すことで事業売り上げは徐々に回復していった。
「私たちの商品を望まれている方にいいモノをお届けしていく。そのことを、これからも守り続けていきたいと考えています」

INFORMATION

株式会社 大江戸

東京都足立区扇2丁目8番5号

03-3856-1651

http://www.ooedo-wagashi.co.jp/