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注染の技と手ぬぐいの文化を継承し、ファンを増やして価値創造していく|東京和晒

Update: 2019.12.26|CategoryTOPICS, よみもの

明治22年、都心を貫く荒川のほど近く、葛飾立石の地にて創業した東京和晒。川を挟んだ鐘ヶ淵には当時国内最大規模の売上を誇っていた紡績会社があり、昔から繊維業が盛んな土地柄だ。染色に必要な水源が豊富であったこと、メインの消費地である東京都心に近いことから、繊維加工の場所として理想的だった。

「晒屋として、いろいろな布を白くする仕事をずっとやっていました」と振り返るのは、東京和晒の4代目で、代表取締役社長の瀧澤一郎さん。「明治の初代は職人さんが穿くような半股引(はんだこ)を扱っていて、途中からは浴衣生地の注文が多くなり、生地の晒しと染色、販売を手掛けるようになりました」

東京本染(注染)という伝統の染色技法で作られた、浴衣や手ぬぐいの扱いも増えていったという。

 

しかし平成の世に入ってからは、繊維・ファッション業界の輸入拡大のあおりを受け、受注や単価が減少。取り扱い製品を拡大するなど手を尽くしたが、このまま海外との価格競争に身を置くだけではもたないと判断し、2011年に本社工場を閉鎖した。

「加えて職人さんの高齢化や後継者不足という問題もあり、決断しました。それでも、伝統文化を継承させていきたいという想いが立ち消えることはありませんでした」

工場を閉鎖する前、試しにカルチャー教室を開催してみたところ、約80人という予想を上回る応募者を記録。工場の売却資金を使い、新社屋のほかに手ぬぐいの注染を体験できる「てぬクリ工房」やギャラリースペースが入った東京和晒創造館を設立し、これまで育んできた伝統文化をより直接伝える場を生み出した。

 

作業台の上に手ぬぐいの長さに折った反物を載せ、型紙を使って染めたくない部分に糊とおがくずを塗布。口の細いヤカンを使い、糊付けされていない部分に染料を注ぎ込んでいく。表裏の区別なく、両面が同時に染まるのが注染の特徴だ。

「ニッチな業界ではありますが、注染に関するノウハウは相当ありますから、そこが我社の強みになっています」

 

てぬクリ工房には、ただ注染を体験してみたかった人だけでなく自主ブランドでの販売など、明確な目的をもって参加する人も多いという。

「ただウチが作って販売するだけでは、先細ってしまうばかり。モノヅクリしたいという人の気持ちを尊重して、彼らを応援し、全体としてのマーケットを広げていくことが大切だと考えています」

これまで、てぬクリ工房を活動のベースとする「手ぬぐいクリエイター」を50名ほど輩出。手ぬぐいの魅力を国内外へと発信している。100枚程度の手ぬぐいの製造コストが10万円未満という新規参入障壁の低さも、多数のクリエイターを生み出せる要因になっている。

「売上自体は大きなものではありませんが、やはり手ぬぐいづくりのファンを増やし、手ぬぐいをはじめとする染色製品のよさに気づいていただく機会を増やしていきたいと思います。」

 

オリジナル商品の開発・販売も行っている。多様なパターンを用いた手ぬぐいや生地、祭りやイベントに欠かせない伴天のほか、東京都や東京都中小企業振興公社や中小機構基盤整備機構の協力を得てボカシ染めシャツ、手ぬぐいおくるみなども生み出してきた。

 

「東京都内の観光案内所にも置かせてもらっているのですが、特に海外からのお客様にご好評いただいております。シャツの開発など、これまで当社で取り扱っていた商品とは違って、製作上の課題や新しい販路の拡大など課題は多く、すぐに成果が出る分けではありませんが、開発し続けるチャレンジを止めるつもりはありません」

 

東東京モノヅクリ商店街への参画も、新たなオリジナル製品の開発を期してのものだ。「東京本染ストール」という、注染技術を生かした新たな服飾雑貨の販路拡大を目指している。

 

現在の事業としては、工場があった時代から続けていた製造仲介の仕事が売上の約半数を占め、小売が約3割、体験教室事業が約2割程度だ。

「オリジナル商品の開発を増やせば経営はさらに安定化しますが、物余りの時代、そこだけに注力してしまうのもリスクがあります。試行錯誤を繰り返しながら、どこかひとつに偏るのではなく、バランスよく成長していきたいですね」

INFORMATION

東京和晒株式会社

〒124-0012 東京都葛飾区立石4丁目14−9

電話: 03-3693-3333

https://tenugui.co.jp/