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“伝説”を継承しカントリー人気を再興していく|イマン

Update: 2025.02.05|CategoryTOPICS, よみもの

ぬくもりのあるシャビーシックなアンティークの家具や棚に飾られた、ほうろうや陶器のキッチン用品。花柄のオリジナル雑貨メーカーであるイマンの店舗兼本社は、ヨーロッパにある昔ながらの住まいを彷彿とさせるような雰囲気に満ちていた。やさしくて気品のあるダイアナローズや控えめながらも美しさと強さを秘めたクラリスなど、可憐な花々を描いたほうろう製品や食器が素敵にディスプレィされていて、足を踏み入れた客に魅惑的な世界を見せている。

「ここはもともと、私の自宅だったんです。それを改装しまして。この奥にも、たくさんの商品在庫が眠っているんです」

そういって出迎えてくれたのは、イマン代表取締役の百木壽美さん。イマンが現在の姿に至るまでの紆余曲折をつぶさに見てきた人物だ。

「イマン」は、1990年に誕生した。当初は欧州からの輸入を主事業としていたが、輸送途中に陶器やガラスが割れてしまうケースが少なくないこともあり、ほうろう製品や陶器を自主企画・販売するようになる。当時のカントリーブームも背景に2000年前後にはファンの間で“伝説のブランドと称されるほどの人気を博すようになった。

「元のイマンの代表と私は同級生で、何度かお話しているうちに『手伝ってもらえないか?』といわれたのが、私が関わることになったきっかけです。それまで雑貨には興味が無かったのですが(笑)、製品に描かれたお花でキッチンが満たされていくことの楽しさというものが、仕事をしているうちにだんだんとわかってきたんです」

ところが2007年、ほうろう製品の製造を頼っていたメーカーが突然倒産。他のメーカーを探すも満足の行く品質ではなく、結局「イマン」の事業会社も同時に倒産してしまう。カントリーブームの収束もあり、「イマン」の役目は終わったかのように見えた。

「それから十数年後、コロナ禍で時間に余裕が生まれたときに『もう一度イマンをやれないか?』という気持ちが募っていったんですね。インターネットを見るとイマン人気が健在であることがわかりましたし、私の自宅にはショップから引き取った商品在庫も什器もあったものですから」

SNSで情報をアップすると大きな反響があり、ECでの販売を開始。在庫は2年で売り切れたという。手応えを感じた百木さんは、再び製造販売の事業化を模索。元の事業主の承諾を受けたうえで著作権など法律上の手続きをクリアし、2023年に会社としてのイマンを設立した。

「昔からのお客さんも本当に喜んでくださって。昔の社員も戻ってくれて、多くの人に感謝しながら事業を続けさせてもらっています」

現在取り扱っている製品はおよそ500点で、すべてオリジナルで企画・製造している。ほうろうと陶器の割合は半々。最近では布製品にも対象を広げた。

「独自に描いた花柄は30種類。海外のアンティーク市で見つけたポストカードやリーフレットなどに描かれた草花を参考に、すべて描き直しました。作りすぎてしまったかもしれませんが、お客様が一人ひとりでお好みの柄が違いますから。みなさんが喜んでくれることを考えるあまり、どんどん増えてしまったんです」

2007年に一度事業が途絶えてしまった経緯を踏まえ、ほうろうの製造の注文は3社に分散している。

「日本全国のたくさんの工場に足を運び、私たちが求めるほうろう製品を作っていただけるところを探し回りました。」
百木さんの熱意とメーカーの努力の結果、2025年には淡くぼかした彩色方法を実現した。

これは『吹き』と呼ばれ、以前の『イマン』でブランドを象徴とする技法だったという。

「新生イマンではなかなか同じような表現ができなかったんです。3年以上かかりましたが、
ようやく『吹き』を再現できるようになりました。これでさらに表現の幅が広がります」

イマンファンの情熱のもとでイマンの商品は業界を席巻し、すでにほうろう雑貨を取り扱うブランドとして一二を争う存在に躍進している。

復活後まもなく、昔からのファンからの信頼を取り戻したイマン。しかし、課題は少なくないと百木さんは胸の内を明かす。それは、インテリアに対する考え方の変化と情報発信の不足だ。

安価な商品やホームセンターの製品で手軽にインテリアを揃えようという人たちが増え
ました。それでも、私たちの製品は裕福な人しか購入できないというような価格帯ではありませんし、本当はお花柄が好きなのに私たちの存在をご存じでないという人もいると思うんです」

これまでインスタグラムやフェイスブック、ウェブサイトなど多くのメディアで情報を発信し、20~30代の新たなファンも獲得したが、潜在的なニーズはまだまだ大きいはずだとも考えている。東東京モノヅクリ商店街に参画したのも情報発信力を高めるためで、パンフレットやリーフレットといった販促ツールを見直している最中だ。

今後は、イマンの強みである『吹き』の技法を活かしたほうろう製品の展開加え、新商品の開発にも注力していく構えだ。コーヒーメーカーのカリタと共同開発したコーヒーミルや小さめの女性用ヌードルボウルなど、これまでになかった製品も意欲的に生み出している。
「お花を飾ると生活に彩りが生まれるように、花柄雑貨が身近にあると気分が癒され、心が豊になるんです。そうしたイマンの魅力を、少しでも多くの人に感じてもらいたいと願っています」

INFORMATION

株式会社イマン

〒 114-0012 東京都 北区 田端新町2-32-1
TEL:03-6822-1842
URL : https://imane.jp/shop